「禁煙外来に行っても、タバコがやめられなかった」
という人を専門に「ニコアン電話カウンセリング」をやっています。
その結果わかったこと。
(多くの)禁煙外来の医師の仕事は、禁煙薬を飲ませることであって、
タバコをやめさせることではありません。
だって実際、やめられなくて、私に相談に来るんですからね。
「たばこをやめたくても、なかなかやめられない人の禁煙をどうサポートしていくか」
この問いに対する答えとして、ひとつ確実に言えるのは、
「禁煙外来には行くなよ」
と指導することです。
敷地内を禁煙にする病院が増えています。大学病院(本院)では、九州大が来年1月6日から実施予定で、広島大が来年3月までに喫煙場所を撤廃することを決め、これで全国80病院すべてで、敷地内禁煙が達成される見通しになりました。
受動喫煙の防止のため、病院や学校などの公共の場所を禁煙とすることは、2003年施行の健康増進法に初めて盛り込まれました。罰則規定のない「努力義務」ではありますが、06年に禁煙治療が保険適用された際に、敷地内禁煙であることが算定の要件とされたことにも後押しされ、徐々に拡大してきました。10年2月の厚労省健康局長通知では改めて、病院や学校は「全面禁煙とすることが望ましい」としています。
病院や医学部のあるキャンパスだけでなく、大学全体を禁煙にする取り組みも始まっています。近年は、高校生の喫煙率が下がり、大学生になってから吸い始める傾向があることから、たばこの「大学デビュー」を防ごうとの狙いもあるようです。主な国立大学では、岩手大や東北大などが敷地内全面禁煙としているのに続き、信州大や大阪大でも計画が進められています。
ただ、敷地内を全面禁煙としている病院でも、実際には隣接する敷地に喫煙所があり、病院を訪れる人も利用するような「抜け道」も目にします。また、敷地内全面禁煙をうたっていても、患者の禁煙が難しいとされる精神科や緩和ケアの病棟では、禁煙化が達成できない病院もあるようです。
全面禁煙を施行するまでには、数年間の準備、周知期間をおくケースが多いようですが、働く人の中にも禁煙できないでいる人もいるでしょう。
たばこをやめたくても、なかなかやめられない人の禁煙をどうサポートしていくかが、病院の敷地内禁煙を名実ともに達成する鍵を握っているようです。(田村良彦)